お茶飴の起源は“茶をたしなむ心”にあった
日本のお茶文化には、「飲む」以外の楽しみ方があることをご存じでしょうか?
そのひとつが「茶飴(お茶飴)」という伝統菓子です。
お茶飴の歴史は古く、江戸時代にはすでに存在していたとされています。
当時のお茶は今ほど日常的な飲み物ではなく、薬としての側面も強く持っていました。高価な煎茶や玉露を気軽に楽しむ手段として、茶葉や煎液を飴に練り込んだのが、茶飴のはじまりだったといわれています。
特にお茶どころである静岡や京都では、煎茶や番茶、ほうじ茶など、地域で親しまれるお茶を使った茶飴が多く作られ、庶民のおやつや贈答品として親しまれてきました。
当時の茶飴は、茶の風味をしっかり感じられるように、人工香料などは一切使われず、職人の技でじっくりと煮詰めてつくられていました。
その味わいはどこか素朴で、でも確かな香りと余韻があり、「口の中でお茶を楽しむ」という特別な体験をもたらしてくれたのです。
茶飴が伝える“日本の手しごと”
現代は、機械生産や人工香料の進化により、あらゆる味が再現可能になりました。
けれども、昔ながらの茶飴には“機械では作れない味わい”があります。
それは、素材の呼吸を大切にすること。
飴を炊く温度、練り込む力加減、冷ますタイミング…そのすべてが職人の勘と経験に支えられているのです。
茶飴は、単なる「お茶風味の飴」ではありません。
それは、日本人の美意識と、四季とともに生きてきた繊細な感性をかたちにした“食文化”のひとつです。
静岡県島田市に受け継がれる伝統──馬場製菓とは
そんな「日本の飴文化」を今も守り続けているのが、静岡県島田市の馬場製菓株式会社です。
昭和27年の創業以来、飴づくり一筋。
銅鍋での直火炊き、熟練の手練り、ひと粒ひと粒をていねいに切り出す手作業…。
現在も、創業当時と変わらぬ製法を貫きながら、時代に合わせた素材選びや製品開発を行っています。
馬場製菓のこだわり
- 飴は練ってこそ味が出る
飴を練る作業には、大きな力と繊細な技術が必要です。
馬場製菓では、機械だけに頼らず、職人が“味ののり”を確認しながら仕上げていきます。 - 素材そのものの味を引き出す
香料や着色料を極力使わず、素材本来の風味を活かす製法が信条。
だからこそ、茶葉や果実、はちみつなどの個性が、飴の中でしっかりと感じられるのです。 - 伝統を次世代へ
近年は、若い職人の育成にも力を入れており、伝統の味を未来へつなぐ取り組みも進んでいます。
馬場製菓の飴を食べるということは、“時間”を味わうこと
私たちが何気なく手に取る一粒の飴。
しかし、その一粒には、原材料の産地や品種選びから、炊き上げ、練り、成形、包装まで、数えきれない工程と時間が込められています。
馬場製菓の飴を口に含んだ瞬間、ただ甘いだけではない“深み”が広がるのは、こうした背景があるからなのです。
しかも飴は、一気に食べるものではありません。
口の中でゆっくりと溶けていき、徐々に香りと風味を感じていく――
つまり飴は、「時をたしなむ」お菓子なのです。
まとめ:お茶飴という文化を未来へ
お茶飴は、単なる「お茶風味のお菓子」ではありません。
それは、日本人の感性、職人の技、素材への敬意が融合した“文化そのもの”です。
そして、それを今も守り、丁寧に形にしてくれているのが、静岡・馬場製菓さんのような飴職人たち。
飴を食べながら静かに時間を過ごす。
その一瞬が、どこか懐かしくて、あたたかい記憶をよみがえらせてくれる。
そんな「お茶飴のある風景」を、これからも多くの人に届けていきたいと思います。
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